庵原コッペル10HP、ポーター、ホーヘンと目途も立ったので、ようやくFSKS-5のCタンクの弁装置の製作に取り掛かる事が出来ます。しかしドイツのHOナローキット、Oナローキットで鍛えられた弁フェチの私の要望と工場長の機械工学者としての拘りが合致し、FSKS/FSKUレンジでは滑り弁可動・フルワーキングは必須条件としました。
何せ若い頃、コッペル弁(Max Orenstein式)の動きを本場のイギリスに投稿し,それが間違っていたという厚顔無恥の私です.でも誰もそれを指摘しなかったのは英国人でも分かっている人は少ないのでしょうか?FSKでもそれを一部取り入れて設計中で近日中にエッチングに出し、リリースの予定です。組んでみてスタックなど起こそうものなら怒声が飛んでくること間違い無し、予め念には念を入れてここは確認しておくに限るということで工場長得意のシミュレーションした結果が添付図面です。特に滑り弁のトラベル量を予測しておくのが筋でしょう。
実際弁装置の設計にあたり、特にHOナローのそれも極小クラスの蒸気の弁装置となると実物とは異なり、様々な矛盾と制約と戦う事になります。たださえガニマタ感漂うプロポーションに加えて弁装置のリンク類を足していくとそれが増幅していくわけです。加えてリンク類の剛性・強度もある程度確保しておかないと耐久性も確保できません。又、ロッド・リンク類の製作法も考えておかないと、組立上で問題が多発することになります。特にリンク類をエッチングで製作する場合、オーバーエッチング分をどの様に評価しておくかは重要で、特にφ0.3、φ0.4の極小のカシメピンを使用するリンク穴の寸法決定は常に頭の痛い所であります。仮にオーバーエッチングを見越して穴を小さめにしておきます。それがエッチング処理後、想定通りであれば良いのですが、もし想定より小さくできてしまうと悲惨で、ピンバイスに咥えたドリルでさらうにしてもその穴の位置で板が折れてしまうことが多々発生することになります。実際エッチングで残された板の内部も腐食されていることが多くエッチング前の状態に比べて強度は落ちていることがあるからです。
私の世代は幸いにも木曽(大滝)森林鉄道に試乗させてもらうことは出来ても、軽便の蒸気を日本で見る機会には恵まれませんでした。興味を持って英国に行って実際に見てきてなる程と思った訳です。日本で今比較的蒸気の分かる本は故臼井さん、金田さんの本ですが、それを以てしても動きが理解出来ないものがありました。今回、世界で多分初めて、激ムズの弁装置の設計に取りかかっているところです。
今まで殆どの日本製のHOナロー機関車では簡易化、省略が行われてきました。しかし、これを1/87の世界で実際に動かそうとするのですから、開発にも時間がかかります。どんどん色々な機関車を出したい・・・と思う反面、やはりクチュクチュと小さな弁装置が実物通り動いて欲しいと思うのです。
さて、ごたくはこの位にして以下製作予定の弁装置設計図の一部を抜粋して載せておきます。順番に次のFSKS-5のコッペルCタンク用コッペル弁、FSKシリーズで予定しているBタンク用ワルシャート弁、バグナルのバガリー式弁装置です。特にバカリーは金田さんの本の写真をどう眺めても動きが分からず、去る外国の情報で動きが分かったのであります。これが動けば、真に素晴らしいと思います。
尚、模型故ワルシャート・バガリー弁装置のラジアスロッドは逆転器をニュートラル位置にしてありますが、滑り弁が常にその運動をリニアライズされるように僅かに可動します。画像クリックで大きな画像がポップアップしますので,本邦初公開のバガリーの謎を解いてみて下さい.



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